これは、お馴染みの
「もしもし かめよ かめさんよ 世界のうちで お前ほど 歩みの…」
という歌詞の小学校唱歌。
今回は、この「かめ」さんと縁のある英単語のお話をします。
英語の一般的「かめ」は、tortoise (トータス)で、
海がめ」は、turtle(タートウル)のほうになります。
この単語に含まれる「tor」(トール)は、
「ねじる」とか「ひねる」といった意味です。
かめが、どうして「ねじる」と関係あるのかな、
と思われるかもしれません。
実は、その理由はかめの足にあるんですよ。
かめの足をよく見てみると、
足が「ねじれ」ているのがわかります。
つまり、かめの足の特徴から付けられた呼び名だというわけです。
もうすこしねじれに関連した英単語をみていきましょう。
tor にsion がつくと torsion (トーシァン)で、
「ねじること、ねじれ」の意味になります。
小、中学生のとき、
戦時中に掘られた小高い山の麓にある防空壕の探索に、
近所の友だちとよく出かけたものです。
いま思い返してもたいへんスリルに満ちた遊びでした。
内部の天井が崩れ落ちたり、一酸化炭素中毒などの危険性があるので、
みなさんは、こんな危険な遊びは決してしないでくださいね。
かなり大きな防空壕の内部は、迷路のようにいくつも通路があり、
2階建ての造りになっていました。
照明として、赤ちゃん用ミルクの空き缶の中にロウソクを立てて、
サーチライト代わりに使います。
これで、けっこう遠くまで照らすことができました。
それから松明も作りました。
50センチほどの竹の筒や棒の先端部分に布を、
「ねじって」巻きつけます。
その布に灯油をかけて火をつけるとりっぱな松明のできあがりです。
これらの照明道具で防空壕探検をするのが、
子どもの頃の大きな楽しみのひとつでもありました。
コウモリの大群やゲジゲジ虫、ガマ蛙、へびなど、
いろんな小動物が住み着いていました。
時には、居ないはずの人の気配を感じたり、
不思議な音などが聞こえたりしました。
前置きが長くなりましたが、
この「たいまつ」のことを、torch (トーチ) といいます。
火を灯すところが、「ねじれられ」ているからです。
こんな危ないところを通っちゃだめと四肢五体をねじって、
心身両面に大変な苦痛を強いるのが、
torture (トーチャ) 「拷問」です。
この単語にも 「tor」(ト-ル) がちゃんと使われています。
また、tor と ment の組み合わせは、
torment (トーメント)で、「苦痛」の意味
当面とっても苦痛です、といったところかな。
その他に、re (リ)「後」とtort(トート)で、
retort(リトート)「言い返す」 になります。
ねじり返して言うからです。
ばかにされたら誰しも、素直にことばを返せませんからね。
言い返されたら、
言い返されたほうの顔も心もねじれて 、
contort (コントート)「ゆがめる」ことになります。
これは、con(コン)「すっかり」とtor で、
すっかりねじれて「ゆがめる」という意味になっています。
tor にex (イクス)「外へ」が付いた 、
extort(イクストート)というのもあります。
外にねじり出して、引っ張り出すから 、
「強要する」とか金銭などを「ゆする」という意味ができています。
disとtortだとdistort ですが、
こちらはdis(ディス)「離れて」が付くことで、
事実などから離したりそらして形などを「ゆがめる」、
事実などを 「曲げる、歪曲する」 などの意味になりました。
関連語として、
tornado(トーネィドウ)「トルネード・大旋風」についてみてみましょう。
一般的に、トルネードというのは、
米国中南部で局地的に発生する半径の小さい空気の渦巻きのことを指します。
台風みたいに勢力範囲が広くはありませんが、
地上では最強の強風や雷雨を伴って大きな被害をもたらします。
以前、トルネード(大旋風)によって受けた大きな被害の惨状を、
アメリカのテレビが報道していたことがありました。
「tornado」は、ラテン語の tonare (トナーレ)「雷がなる」が、
スペイン語に入りtornar(トルナール)の語形になりました。
このスペイン語が、tornada (トルナーダ)「雷雨」になり、
やがて英語に借用されてできたのがtornado です。
この単語の tor は、語源的には、
turn のtur (トゥル )[まわす・まわる] 方とされているようです。
「tor」と「tur 」は、兄弟・姉妹の関係にある語根といっていいでしょう。
雷雨になると、
ねじれた雷がおこり、天と地の間の空気も ねじれる感じがしますね。
やがて空気が回りだし、渦を巻いて竜巻や旋風になるというわけですね。
最後に、次の2つの単語のつづりと意味の違いをみておきましょう。
●tortuous (トーチュアス) 「ねじれた・曲がりくねった」、「遠まわしの・回りくどい」
●torturous (トーチュラス) 「拷問の」
「 ous 」 の前に 「 r 」 の一文字が、あるかないかの 違いですが、
この 「 r 」は、繰り返しを表す「 re 」の「 r 」と考えたほうがいいです。
「 r 」を繰り返しねじられたり、引きずり回されたりするイメージにつなげてください。
そうすれば、torturous (トーチュラス) が、
「拷問の」という形容詞として記憶に残るでしょう。
ほんとうに、
このような言葉が存在しないような世の中でありたいですね。
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